日本では偽札を見かけない理由とは?

ミステリー

外国で現金で買い物をする時、レジの店員さんが必ずといってよいほどやっているのが偽札かどうかの確認です。日本人観光客が外国で買い物をして驚くのは、この光景ではないでしょうか。日本の銀行で購入したピン札のドル紙幣などは入念にチェックされます。

実は、その逆も言えます。来日した外国人が買い物をするときに、客が出した紙幣をレジの人が偽札かどうかのチェックをしないことに驚く人も多いようです。

偽札の確認方法は色々あるようですが、ブラックライトをあてたり、特殊なペンで紙幣面をなぞったりするのが一般的ではないでしょうか。時々、紙幣の透かしを確認している店員さんもいます。偽札の識別方法は、出回っている偽札のタイプにより異なるため、万能の識別方法はないようです。

日本で偽札を目にすることはまずありません。高額な宝くじに当たるくらい稀なケースで偽札を掴まされます。それは、もはや、ラッキーとしか言いようがありません。

日本円の偽札がほとんどない理由は、さまざまな工夫が施された芸術品のようなお札だから。ホログラム、すき入れバーパターン、潜像模様、潜像パール模様、マイクロ文字、特殊発光インキ、深凹版印刷、識別マークという異なった偽造防止対策を施している紙幣は世界の中でも日本円だけです。たまに、じっくりとお札を見ていると、いろいろな発見があるので楽しめます。

そして、偽造紙幣の拡散を防いでいるのが日本人。指先の感覚だけで偽造紙幣を見破ります。日本には、日本円しか流通していないということも理由の一つかも。そんなの当たり前じゃないかと思った人は、外国の実態をご存じない。多くの国で米ドルで買い物ができますし、ウズベキスタンなど中央アジアに位置する旧ソビエト連邦の国では、中国元で普通に買い物ができます。

世の中には偽札のコレクターがいるようで、オークションに出品されたりしているようです。偽造が困難な日本円の精巧な偽札を掴まされたら・・・・、家宝ですね。現実社会では使えないから「家宝」になるわけですから。偽札を所持していること自体を禁止する法律はないようです。その紙幣が「廃貨」となる数十年後くらいに価値がでてくるかも。

Counterfeit bill 壱万円札

上の壱万円札で、なぜこれが偽札なのか分かりますよね。偽札ではなく、印刷エラーだったらまさに「家宝」です。

偽札コレクター間の売買を禁止する法律はないと思いますが、それは現在使われていない「廃貨」の場合であって、現行紙幣の偽札を取引すれば警察に捕まるでしょうね。裁判になるか、そもそも公判が維持できるかは疑問ですが。

刑法第148条(通貨偽造及び行使等)は次のようになっています。

行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する。

偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

解説を読むと、「本罪の行為は、偽造通貨を、①行使すること、②行使の目的で人に交付すること、③行使の目的で輸入することです。とくに、①「行使」と、②(行使目的での)「交付」との区別が重要になります。」と書かれています。

麻薬は所持しただけで罪に問われますが、偽札は所持ではなく「行使」が罪を問うキーとなっているようです。コレクター間での売買が「交付」にあたるかどうかが微妙ですね。検察側はここを衝いてくるのでしょうけど。行使目的が推定されるとか言って捜査に入るでしょう。

いずれにしても、偽札は、「行使」、つまり、偽札と知っていて使うことで罪に問われるので、一般人は関わらない方が無難でしょう。旦那がしまっておいた偽札を見つけた彼の奥さんが、偽札と知らずに使ってしまったということも起きないとは言えません(笑)。収得後知情行使等の罪(刑法第152条)もあるので、とてもやっかいなことになります。毎日毎日、警察で取り調べを受けることになります。偽札は、殺人罪や誘拐罪に並ぶ重罪なので、警察の本気度が違います。関わらないのが一番です。

低額面の偽札ほどレアな気がします。偽札は製造コストが高いため、低額面の偽札はそもそも作られないようです。コピー機で作るお手軽なものは低コストでできますが、お手軽だからといって逮捕されたときに罪が軽くなる分けではない。

管理人が見たことがある本物の偽札は、50ドルの偽札です。とてもレアです。ボリビアの中華レストランのレジのところに貼ってありました。サインペンでたくさん落書きをして、さらに偽札と書いてある。店主に、売ってくれと言ったのですがダメでした。

その偽札の造りは粗雑なもので、よく見れば偽札と判読できる程度のできばえでした。
日本で日本円の偽札を掴まされたらどうしたらよいか。

警察に持っていくと、正規の紙幣に交換してくれるそうです。名目は「交換」ではないようですが。ババ抜きのように、偽札が別の人に渡り、流通するのを防ぐための措置なのだとか。

日本における偽札事件は、それほど多くはないようです。コピー機を使ったオモチャのような偽札ではなく、原版を作り、本物と同じ紙を使い、印刷機で大規模に印刷されたような偽札についてはほとんど聞きません。精巧な偽札であればあるほど、それを作ることができる人間は限られており、すぐに逮捕されてしまうからでしょう。

特に、日本は現金による買い物が主流の国で、日頃から現金に触れているので、指触りのちょっとの違いでもすぐに見つけてしまう。管理人は、毎日、数万枚の壱万円札を数えているので、指の指紋が消えそうです。お金など見たくもない・・。当然、嘘です(笑)。そんなことを言ってみたいものです。

そういえば、外国人のお札の扱い方にも違いがあります。

例えば、千円の買い物をして、1万円札で支払ったとします。おつりが千円札で9枚戻ってきます。あなたは、その紙幣の裏表と上下をそろえてから財布にしまいますか? そんなことをしている日本人はほとんど見かけませんね。ところが、外国人は違います。きれいに並べ替えてから財布にしまいます。

これは、ちょっとした違いのように感じますが、実際には根が深い。日本人がずぼらで、外国人が几帳面なわけではありません。外国にいたとき、たまたま紙幣をそろえる状況を目にしたので、その人に管理人が聞いてみました。

「なぜ、紙幣の表裏、上下までそろえるの?」

その答えは、本人も分からないというものでした。無意識のうちにそうする。誰もがそうしているので習慣になっている、という回答でした。

別の人に聞いたときは、偽札を見つけやすいからと言っていました。

紙幣の受け渡し、財布へのしまい方など、日本と外国とではちょっと違う。

今日は、そんなお話しでした。

実は、この記事では、この後に、明治時代のとても奇妙な贋札事件について書いたのですが、少し長くなったので、その部分は次回の記事に回すことにしました。次回をお楽しみに。

世にも不思議な明治の贋札事件の謎を追う