ミュシャの娘ヤロスラヴァが美しい

画像編

 昨年、ミュシャ展が東京・国立新美術館で開催されました。その時の様子は過去記事『ミュシャ展に行ってきました:行くなら今でしょ!』で書きました。

 この展覧会では、ミュシャ晩年の超大作「スラヴ叙事詩」、全20作品が公開されていたのですが、その中の「スラヴ菩提樹の下での若者たちの誓い」 という作品の中で、ミュシャの娘ヤロスラヴァ(Jaroslava Muchová:1909年3月15日 – 1986年11月9日、享年77)がモデルとして描かれています。下の画像の左下の少女の絵がヤロスラヴァです。


Photo:: Wikipedia

 ミュシャは、モデルの写真を使って絵を描いていたらしく、モデルの写真のポーズと寸分違わずに描かれているものがあります。その代表例がこのヤロスラヴァの部分です。なかなかかわいらしいお嬢さんです。この娘は、ミュシャ49才の時に生まれた最初の子供でした。ミュシャの彼女に対する愛情が伝わってくるようです。

  「スラヴ菩提樹の下での若者たちの誓い」の中に、ヤロスラヴァの写真を組み込むと下のような画像になります。(画像をクリックすると拡大表示できます。)

ヤロスラヴァ

 この画像の合成過程で、ほとんど変形が必要ないほど、ヤロスラヴァの写真が絵の中に忠実に写し取られています。変わっているのは足の角度くらいです。指の位置まで同じなのには驚きました。写真をキャンバスに投射して下書きを書いたのではないかと思います。

 GIFアニメ版も作ってみました。どれだけ写真に忠実に描かれているかが分かると思います。

スラヴ菩提樹の下での若者たちの誓いの写真対比
スラヴ菩提樹の下での若者たちの誓いの写真対比

 ヤロスラヴァが木の枝を抱えていますが、絵ではハープを奏でる少女になっています。

 ミュシャは娘をモデルにたくさんの絵を残しています。

 写真を投影して下書きする手法は、当時流行したようです。ミュシャはデッサン力があり、そんなツールを使わなくとも描けたように思いますが、モデルに対するこだわりがあったのではないでしょうか。

 モデルを使った他の作品では、モデルを無視した部分も多くあるのですが、ヤロスラヴァをモデルにしたときには、モデルに忠実に描いているように感じられます。ヤロスラヴァはミュシャにとって最高で理想的なモデルだったのではないでしょうか。

 このサイトでは、通常であれば、ヤロスラヴァの生涯を追うのですが、情報がほとんどないため、今回は深追いするのはやめました。