ボリビア旅行の計画の立て方(1):高山病

生活編

 ボリビア旅行を計画されている方に役立つ情報をまとめて書きたいと思います。既に、本館に書いている内容と重複する部分もありますが、このような情報サイトは意外に少ないので書くことにします。

 以前書いた詳細な記述のある記事にリンクした方が良いと考え、リンクを多用しています。

旅行先を決める前の基礎知識

 ボリビア旅行を考えている方で、アンデス部分を訪れず、サンタクルスなどの低位部のみを考えている方は非常に少ないと思います。ボリビアに行くのなら、やはり、アンデスだと思います。

 アンデスの旅行を企画する場合に先ず注意すべき点は標高でしょう。高山病の恐れがあるからです。次に、交通の便、所要時間、そして、治安です。

 これらは、基本的なことなのですが、ネット上の情報ではどうもよく分からない、と思います。これらの情報を入手するためにいろいろなサイトを訪問しても、結局はよく分からない。なぜなら、サイトにより、書いてある内容がバラバラだから。そこで、海外関係の業務経験20年、ボリビアに3年あまり住んだことのある管理人が、役立つ情報を発信したいと思います。

  高山病について
 ボリビアに旅行する場合、日本人が最初に心配するのは高山病についてではないでしょうか。
高山病に罹ったことのある日本人はほとんどいないと思います。だから、アンデスへ旅行を計画する時、高山病ってどのような症状がでるのか、高山病に自分が罹るのか、予防法はあるのか、罹った場合にはどうしたらよいのか、などの情報が必要になります。

1.標高と高山病

 高山病になるのは、標高何メートルくらいからでしょうか。

 個人差と体調にも左右されると思いますが、標高2,500メートルくらいが目安かと思います。スクレ市の標高は2,800mですが、どのホテルにも酸素吸入器は置いていません。このくらいの標高なら、高山病の症状が出ても軽度で済むようです。ホテルのフロントに聞いても、高山病に罹る人はいないという話でした。

 仕事の同僚に高山病に罹りやすい人がいました。彼は、スクレの標高でも少しつらそうでしたが、サッカーを楽しんだりして、元気に働いていました。しかし、標高が3,000mを超えると急に体調が悪化するようで、まるでバロメーター(気圧計)のような人でした。標高3,000mが一つの境(閾値)になっているようです。

 ラパスで高山病の症状が出ても、スクレに来れば大丈夫という人がほとんどでした。このため、次の境は4,000mではないかと思います。

 管理人は、標高4,000mでも比較的平気でしたが、標高4,500mで高山病に罹り、つらい思いをしました。このため、次の境は、4,500mあたりだと感じました。

 アンデス旅行を計画する際には、この3つの標高を頭に入れておいた方が良いと思います。

2.高山病の症状

 ボリビア・アンデスの都市の標高は、2,800mから4,000m程度です。高山病に罹る可能性は決して低くはありません。高山病の中でも高所肺水腫は、とても怖い病気です。甘く見てはいけません。重度の症状になったら、直ぐに、標高の低い場所に移動しないと死亡する場合もあります。

(後日談として聞いた話ですが)同僚の奥様が、ラパスに到着後、高山病に罹り、ご主人のいる標高2800mのスクレに来ても回復せず、結局、サンタクルスに移送されることになりました。ご本人は大変だったと思いますが、それをバックアップしたスタッフも大変な思いをしました。

 高山病の症状としては、『風邪をひいて高熱になり、頭が痛く、もうろうとして、目と額のあたりがとても重苦しい』という感じです。もちろん、熱はありません。頭痛と目の周りの違和感が特徴かと思います。これに、腹部膨満感、人によっては下痢、嘔吐が伴います。少し動いただけで息苦しいと感じます。

 管理人の体験談は ↓ こちらをご覧下さい。
エクアドルの最高峰 チンボラソ山に登る

3.高山病は慣れるか?

 高山病に罹患するかどうかは、かなり個人差があります。標高に対する慣れはあまり無いというのが管理人の感想です。ただし、少しずつ標高を上げていくという方法は有効だと思います。

 「高山病って慣れるの?
 実は、1.で書いた閾値の標高は、人体にとって微妙な標高なのかも知れません。

 管理人は、何度もラパスに出張しているのですが、出張するたびに高山病の症状が重くなっていったと感じました。標高2,800mのスクレに2年間住んでいても、ラパスの標高には対応できませんでした。

4.高山病にならない対策

 ラパスに降り立つ大多数の方は、問題なくラパス観光を楽しんでいます。

 高山病は個人差があるので、自分がどの標高で症状が出るのかを知ることが重要です。これには、いきなり、標高4,000mのラパスの空港に降り立つのではなく、徐々に標高を上げていくような旅行ルートを設定すると、ある程度安心できます。

 高山病に対して不安のある方は、次のいずれかの方法をお奨めします。

① ボリビアへの入国は、首都ラパス(標高4000m)ではなく、サンタクルス(標高400m)とするルートを選定する。
② アンデス高地への旅行ルートを時間をかけて次第に標高が高くなるように設定する。 

5.高山病は気持ちの持ち方によっても左右される

 高山病の症状が出るのは、心理的なものもかなり影響します。
 富士山よりも高いところに行くのだと日本でさんざん脅かされ、未知の標高に挑むことになるので、旅行者は不安で一杯です。高地で空気が薄いから高山病になるかも知れないという強迫観念に囚われがちです。このような不安を抱えていると、ラパスに到着した時、空気が薄く感じるようです。

しかし、大部分の人は、少し頭が痛いという程度です。その意味ではご安心下さい。

 さらに、安心して頂くために、少し科学的説明をします。

 飛行機の中では、地上より2割減圧して飛行しています。ところが、飛行機の中で高山病の症状を呈する人はまずいません。飛行機の気圧は、標高4,000mのラパス空港に到着するかなり前から現地の気圧に調整しています。ラパス飛行場に着陸し、飛行機のドアが開いた瞬間に高山病に罹るなどありえないのです。大多数の人は、問題なくラパス空港に降り立ち、そこからかなり下に位置するラパス市内に向かいます。

 ラパスのエル・アルト国際空港の標高は4,061mです。ここでの気圧は、気温10℃で約634hPa。東京の63%の気圧しかないことになります。ところで、機内の気圧は、地上と同じ1気圧ではなく、約0.8気圧に調整されています。これは、標高に換算すると、ちょうど2000mの山頂と同じ気圧になります。機内では、ずっと、この気圧で飛んでいるので、ラパスに降り立った時は、それほど呼吸はつらくない筈です

6.高山病に罹ったらどうするか

 ボリビアでは、コカの葉が高山病に効くと言われています。このコカの葉はコカインの原料となるもので、日本への持ち込みは厳禁ですが、ボリビアでは嗜好用として一般に売られています。麻薬としてのコカインを抽出するにはトラック一杯のコカの葉が必要です。

 数枚のコカの葉を口に入れても、ほとんどの人は何も感じないと思います。運転手は、多量のコカの葉を噛み続け、眠気をさまします。コーヒーに含まれるカフェインと同じ感じです。管理人は、コカの葉を噛んでも、普段は何も感じず、本当に効果があるのか疑っていたのですが、自分が高山病になった時に口に入れると、確かに効果があることを実感しました。ただし、効果は長続きしないので、頻繁に口に入れる必要があります。高山病が治る分けではなく、症状が軽減される感じです。

 高山病の薬というものがあるようです。これについての情報は持っていません。ただ、言えることは、他国の旅行者は、そんな心配をしていないということ。日本で高山病の薬を入手しようとするようなことは、考える必要はないと思います。必要になったら、現地で数十円で買えばよいので。

7.アンデスとチベットに住む人では高所適用のための身体の仕組みがそもそも違う

 標高4000mを超えるヒマラヤ、チベット、アンデスで暮らす人たちは、身体が高所に適応しており、低酸素をものともせず、快適に暮らしている・・・ように見えます。

 しかし、研究の結果、人間の身体が低酸素に適法する方法は、アンデスに住む人たちとチベット・ヒマラヤに住む人たちとでは全く異なることが明らかになっています。長い年月の間に、この二つの地域では別々の方法で高度に適応するように身体の仕組みが変化していったようです。

 アンデスの住民は、酸素を体中に運ぶ赤血球を増加させることで、低酸素状態を緩和しようとします。我々低地に住む人間が高地に行った時にも、我々の身体はこのような反応を示します。このため、血液はドロドロ状態になります。

 これに対し、ヒマラヤの人たちの場合は、血液中の一酸化窒素を増加させることで血流を増やすという方法が採られます。赤血球を増やさず、その速度を高めることで必要な酸素量を確保している。このため、血液はドロドロにはなりません。

 同じ人間なのに身体の仕組みが違うのです。このような身体の機能変化は、当然、長年の食習慣から大きな影響を受けています。近年、伝統的な食生活から現代的な食べ物に変化したため、様々な病気に罹患するようになりました。食生活の質の向上、それは、低地に住む人たちが考えたもので、高地に住む人にとって、本当に食生活の質の向上になっているかは、分からない部分もあります。
 
【参考】
2016年6月26日、放送大学、『ヒマラヤ高所に生きる人々の生活と健康- 高所適応とグローバル化による撹乱-』