洪水を簡単に防げる「 ボックスウォール」って何だ?

生活編

GIFのサイトを見ていたら、ちょっと目を疑うようなものを発見! なんだこれ?

これは何だ?

 この製品は、「 ボックスウォール」という名前の洪水対策商品のようです。

 特殊なL型をしていることから、水の自重で壁の転倒を抑える構造なのだろうと推測できます。

 そして、この構造では壁の転倒を抑えきれないことも容易に分かります。静止状態の水ではなく、動いている水が相手です。水平方向にかかる力は、静水圧と水流の圧力の両方がかかります。これに対し、転倒を抑える鉛直方向にかかる力は水の自重だけ。これでバランスをとることができないことは計算するまでもありません。水平方向の力がはるかに勝ります。

 GIFを見ると、流れる水は、かなりの流速があります。通常なら、この水圧で押し流されるか転倒してしまいます。

 だから不思議なのです。


Source: YouTube “Testing the NOAQ Boxwall against flash flooding”

商品名は「 ボックスウォール」

 この製品は、スウェーデンの『NOAQ Flood Protection AB』という会社が開発した洪水対策用の移動式防御壁のようです。

 仕様は以下の通り。

ボックスウォール
材質:ABS樹脂

サイズ(幅W × 奥行D × 高さH)[mm]:705 × 680 × 528

最大堰き止め高[mm]:500

重量[kg]:3.4/個

付属品:バネクランプ(1枚に1個)

接続枚数/長さ(m)早見表
1枚:0.705m、2枚:1.33m、3枚:1.96m、4枚:2.58m
5枚:3.21m、6枚:3.83m、 7枚:4.46m、8枚:5.08m
9枚:5.71m、10枚:6.33m、11枚:6.96m、12枚:7.58m
13枚:8.21m、14枚:8.83m、15枚:9.46m、16枚:10.08m

出典:げんばのドン

 高さ50cmまでの水位に対応しているようです。

 問題はそのお値段です。

 価格:41,040 円(税込) 8枚から購入になります。ということは8枚で32万円。

 こんなプラスチック製品が1個4万円もするなんて、どう考えてもおかしい。

 この製品の価格をネットで調べてもヒットしません。オープン価格のようです。どうも怪しい。

 たまたま見つかったのは、「60.96m (200 feet) $11,924.5」という契約書。これだと、200ドル/m。1個140ドル(15500円)程度です。まあ、この程度なら許せるけど、4万円はいくら何でも足下を見すぎ。自治体相手で、強気の価格設定なのでしょうが、・・。

この製品は本当に使えるのか

 最近頻発している異常気象。思わぬ出水により床下浸水などの被害を受けたりして、洪水の心配をしている人も多いのではないでしょうか。

 そんなとき、「 ボックスウォール」は役に立つか?

 残念ながら使えません。

 この製品は、アスファルトの通りや駐車場、コンクリートの床のような平らな表面での使用を想定して開発されたもので、そのような平らな面のない場所では使えません。

 日本の家屋の場合、囲いたい場所にどうしても段差があり、これを設置するだけの平坦なスペースはないと思います。

 また、この製品の本来の使い方は、水流の方向をそらすというもの。

 川があふれ、辺り一面、湖のようになったら、この製品で浸水を防げるか?

 残念ながら防げません。単に地面に置いているだけなので、接地面からの漏水は食い止めることができない。短時間なら使えるでしょうが、時間とともに漏水量が増え、洪水防止の役割は果たせなくなるでしょう。

 日本で普及するには、日本の家屋の条件に合った設計が必要と思います。

 しかし、このような製品のニーズは高いはずです。床下浸水で商品を台無しにしたり、洪水後の泥の撤去作業をしたことのある人なら、こんな商品が欲しいと思ったはず。

 スウェーデンの製品ではなく、日本独自の製品をぜひ開発して欲しい。できれば、ダイソーが。

気になる構造

 管理人はこの構造がどうなっているのか気になります。

 会社のHPを見ても書かれていない。

 どこかにないか探し回った結果、やっと見つけました。こうなっているのか! やっと仕組みが分かりました。


IMAGE: BLUEMONT

  この製品の底部には発泡ゴムが使われており、これがアスファルトやコンクリート面と密着する構造のようです。つま先部分と底面では構造が異なり、一度縁切りすることで地面との密着性を高める構造のようです。

 つまり、ゴムの密着性により転倒しない構造になっています。ということは、アスファルト面に土があるとこの製品は簡単に転倒します。

 気になるのは、発泡ゴムの耐候性・耐久性。このような製品は滅多に使うものではありません。普段はどこか倉庫にしまわれているはず。しかし、その間にゴムの劣化が進行し硬くなり、密着性能は徐々に失われていきます。

 購入して数年後、いざ使おうと思ったら、ゴムが硬くなって洪水を止めることができない。そんな事態が発生するかも知れません。

 この商品を強気で販売するのはいいけれど、ゴムの劣化についての説明がなされないと訴えられるかも。高い値段で販売しているので、訴えられると会社はすぐ倒産です。

 アスファルトの表面に土がない状態なら使えます。動画を見ると、まさにその状態ですね。

 ところが、洪水の時は、泥水が流れてくるので、アスファルトの表面は泥だらけ。動画のようなきれいな水なら自立しても、泥水では無理です。

 洪水対策グッズとして販売しているのに、泥水では機能しないのでは話にならない。

 この製品は特許を取得しているようですが、日本でその特許が認められるか疑問です。このような構造の製品はたくさんあるので。

 管理人が言いたかったことは、この製品の善し悪しではなく、このような製品に対するニーズが急激に増加しているということです。

 日本の条件にマッチした商品開発が待たれます。